ちゃぶ台の魅力に気付いて
ちゃぶ台の良さにあらためて気付くのには時間がかかりました。長らくちゃぶ台は作らないモノと決めていたからです。理由は木で折りたたみの構造を作ると長い間には摩耗し、故障の元になるからです。伝統的なちゃぶ台の構造はとても合理的なのですが、ちょっと無理もしているようです。
京都に旅行したときのことです。知人のカフェに入り、3家族でお茶を飲んでいました。子供たちは縁側にあるちゃぶ台に集まって画を描き始めました。しばらくその様子を見ていたら・・とてもほほえましい光景で、「ああ、いいなあ。」と素直に思いました。そして、ちゃぶ台がほしくなりました。あの丸い形、大きさ、高さが色々な場面で使いやすく、子供たちもちょうど良いのかもしれません。
さて、課題は構造ですけど、そこはWork Around Tableで試行錯誤してきた金属構造を使うことで解決できると考えました。「しっかりとしたちゃぶ台が作れるかもしれない!」・・もうその場でスケッチが始まりました。
でも、このチャレンジには時間がかかりました。やはり折りたたみの構造をどうするのかということです。そしていくつかの試作を経て、金属のヒンジを作ることで僕たちなりの答えを出しました。
課題は大きく3つありました。
1.天板には反りを押さえるための構造がとても大事。それをしかるべき位置に付ける必要があること。
2.シンプルな構造で強度と折りたたみの機能を満足させること。
3.万が一の修理の際も構造部の取り替えが簡単であること。
考えてみればちゃぶ台が発明されてから100年くらいになります。でも、この課題に対して新しい答えを出そうとしたものが見当たりません。それはたぶん、ちゃぶ台の置かれた立場・・効率的に安く早く作らないといけなかったことから工夫にも限度があったのかもしれませんね。
ちゃぶ台を使ってみたらわかりました。床に座ってご飯を食べる、お酒を一杯飲むというのは不思議な安らぎがありますね。ちゃぶ台のある生活・・なかなか楽しいです。そしてその景色はもまたいいなあと思います。
構造をあらためて考えてみると
100年間変わらなかったもの
伝統的な構造はそれ以上手が付けられないものです。そこには長い時間をかけた職人さんたちの創意工夫が濃く入っていますから。木で作るときの構造にはいくつかの形があって、それぞれに工夫があり、知れば知るほど感心します。また、手のかかった物には摩耗しやすい箇所を真鍮などで補強している場合もあります。
ただ合理的な構造ゆえに、反り止めの位置にしわ寄せがいってしまったようです。無垢の天板を使うときには湿度の変化などで起こる「反り」を押さえる働きをもつ部材、構造が必要です。ちゃぶ台の場合は理想的には円の中心を通る場所、天板の一番幅のあるところにそれを付けたいのです。伝統的な構造では脚を折って納める枠を反り止めにしているのですが、枠はどうしても中心から離れた位置にいってしまいます。結果、反り止めの効果は少なく、古いちゃぶ台を見ますと天板がかなり反っているものが多いのです。
今回、僕たちがちゃぶ台を作るに当たっては、反り止めを理想的な位置に付けたいと思いました。一般的には厚みのある無垢の部材を反り止めとしますが、代わりにステンレスで構造材を作り、天板裏に納めることとしました。金属の反り止めを埋め込む技法は欧州の家具には古来よりあるものですが、それに一工夫加えたわけです。
次に脚の折りたたみ構造ですが、ステンレスで丈夫なヒンジを作りました。これを反り止めとしている構造材に取り付けています。この方法だと、万が一の修理の場合・・壊れるとしたら負荷のかかるヒンジですから、これを少しの手間で交換し、修理することができます。
実は伝統的な構造のちゃぶ台は修理が難しいのです。摩耗し、ガタがきた部材をすべて交換することになりますが、ちゃんと直すにはほぼすべての部材の交換となります。加えて天板が大きく反っていたら・・もう修理するのもどうかと。長くしっかりと使えているちゃぶ台もあると思います。でも、多くはどこかにガタがあるでしょう。ちゃぶ台というのはそういうものであると思って付き合うしかなかったのです。
TataMaruは脚を折りたたんだときにマグネットで脚を構造材に引き寄せるようになっていますので折りたたんでひっくり返したときに脚がばたつくこともありません。そのまま低い宴卓としても使えます。
使いやすい高さを試してみる
ちゃぶ台の大きさと高さを考えて
大きさと高さのことはいつも考えさせられます。ちゃぶ台や座卓を色々と試してみたのですが、高すぎるなと思うものはありますけど、どうやら低すぎるというのはないようです。お膳のように低い物はそれはそれで使いやすいのです。大きさの方は直径60-90cmくらいがよいようです。もし普段ダイニングテーブルを使っているのなら、ちゃぶ台は小さい方が小回りがきいて色々な場面で使いやすいのではと思います。
高さはもちろん使い方によります。手紙を書くという場合はある程度高さがないと使いにくいですね。そういう意味ではオールマイティーなのは30-32cmだと思います。一方これ以上高いと・・座卓では結構あるんですけどね・・ちょっと違和感があります。
また、ご飯を食べたり、ノートパソコンを使うのならもう少し低い方がいいですね。25cm前後が良い感じです。お茶碗が取りやすく、手とキーボードの位置がしっくり来ます。
そして、「くつろぎの場で使うだけだから・・」というのならもっと低く、それこそお膳の高さで10-20cmがいいように思います。低い方がよりくつろげますし、向かい側に座る人との間にさまたげるものがなくて心地良く感じます。また、冬場にお鍋などをするときもやはり低い方がなにかと便利。この高さは「大人が日々を楽しむ高さ」とでも言いましょうか。
TataMaruは直径74cm 高さ25cmとしました。脚を折りたたむと高さは9cmくらい。3-4人でご飯を食べたり、日常使うにはちょうどいい寸法だと思います。宴会のときは6-7人でも大丈夫。肩を寄せ合うようになるのもなかなか楽しいですよ。友人との距離が更に近づくような気もして、ちょっと素敵かな。
床座の良さ、その楽しみ
私たちは自宅では靴を脱ぎ、床に座る習慣を持っています。ダイニングテーブルと椅子の生活が当たり前になりましたけど、何かといえば床に座り、ときにはゴロゴロしたり。その方がくつろげるのかなと思います。
畳の部屋も少なくなったようですけど、最近やっぱりいいなって思います。ちゃぶ台もやっぱりいいです。ホッとします。
TataMaru(タタマル)とは「たためる」の方言ですが、このちゃぶ台にはピッタリな名前だと思いました。たためるのでちょっと外に持ち出しても楽しい。デッキはもちろん、車に積んで公園にも出かけています。
和であり、洋でもある姿と素材選び
2種類の材を選びました。
ちゃぶ台ですから和のイメージが強いですけれど、シンプルな形と洋家具にも長く使われてきた無垢材を選びましたから和洋どちらのスタイルとも言えない仕上がりとなりました。和室、洋室を選ばず、両方のインテリアに合うと思います。畳、フローリングともに相性はいいようです。
天板にはウォールナットとタモ材を選びました。ウォールナット材は洋家具材としては最上手のもので、色の濃さも特徴ですが、適度な堅さでしっとりしています。タモ材は建築にもよく使われますが、しっかりとした材でありながら、やや軽いのが特徴です。木目もはっきりとしています。どちらの材も使い込むことで深い味わいを生み出します。
2020/9/28 材料事情により家具の受注を当面控えます。
詳しくはNewsで
TataMaru
2019/1/15 使用材料をナラ柾目材からタモ板目材へと変更いたしました。
詳しくはNewsで
尚、材料変更に伴いまして製品価格を127,000円から12,5000円といたしました。その他の仕様変更はありません。
タモ材
価格:125,000円 (税込み:137,500円)
サイズ:74W×H25cm
仕上げ:オイル
TataMaru
ウォールナット材
価格:157,000円 (税込み:172,700円)
サイズ:W74×H25cm
仕上げ:オイル
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