すっきりとした素材感のある椅子を使いたい。
家具を作る人たちにとって「「椅子」はちょっと特別かもしれません。椅子が体に一番近い家具であることや様々な形での表現ができるから、そこに難しさと面白さがあって興味が尽きないようです。椅子だけ見ても実に色々なデザイン、作り方があります。
そして僕たちも椅子作りにチャレンジ。ノリト・チェアーはテーブルと同様にステンレスと無垢の木材を使って作りました。それは金属の持つ剛性感と木の持つ優しい素材感を組み合わせて家具を作りたいという思いからです。剛性のある金属を構造部分に使うと木だけで作るときよりも形作りが少し自由になりますが、課題はその自由度をどうやって使うかだと思います。
僕たちが大事にしたいこと。考えたこと、そして選んだこととは・・
シンプルで基本的な椅子の形を目指すこと。
座と背の大きさ、幅や奥行きを十分に取ること。
日本人の体格や生活スタイルに合う座面高にすること。
踏み台のように使っても十分な剛性があり、長く使ってもらえる耐久性があること。
木の座面ならではの座り心地と触感を大事にすること。
そして、毎日使うからこそ・・素材感のある椅子にしたいと思いました。
椅子を作りをじっくり考える。
あらためてダイニング・チェアーを考えてみて
納得できるダイニングの椅子を探してみるとなかなか出会わないものですね。例えば座面の高さですが、椅子を作る人たちの多くが42cm以上を選びます。これは輸入品の椅子の高さを借りてきているからかもしれませんが、僕たちの体格では足裏が浮くような、ももの下側が当たるような感じがあります。40~42cmの高さなら心地よいと思うのですが、そういった椅子は意外と少ないことに気づきます。
座と背の幅と奥行きは座り心地にとても影響します。余裕のある大きさでないと色々な姿勢や体格に合わせることができません。また腰のところに十分な支えがあると楽な姿勢が探しやすいようです。この点でも軽く合理的に作ろうとするあまり、座と背の大きさが十分でない椅子が多くあります。
剛性や耐久性については長く木の椅子を見てきた経験上、壊れやすい箇所があるのを知っています。木だけで椅子を作る場合はその接続箇所にちゃんと手間をかけておかないと長持ちしませんが、市販の椅子にその工夫があるものは少ないのです。
新たに椅子を作ることになりましたから、今までの経験や考えてきたことを元に形にしたいなと思いました。こうして多くの椅子を見てみると、何かを作るということはバランスを考えることなのかもしれません。あるいは目指したい形を探し出す作業かもしれません。どっちが良いか悪いかということではなく、何かを選び取ることですから。それぞれに考え、選んでいけばいいのですが、その結果がモノの形や使い心地に現れるものなんですね。僕たちも必要な選択をし、椅子作りをしてみました。
そしてあらためて思います。座り心地や耐久性も大事なのですが、椅子は体に近い家具ですから触感・・座ったときに触れて感じることがあります。それを大事にして作りたいと思いました。
静かなたたずまいの中に
素材感と剛性感
両方共、感覚の話なのですが、早く安く作ろうとすると得てして妥協してしまう部分のようです。買いやすい価格に抑えることもひとつの考え方だと思いますが、家具は毎日使い、長く使う道具です。触れたときの心地よさや腰掛けたときにしっかり支えてくれる感覚はとても大事なことだと思っています。
素材の持つ力や丈夫さは日々の心地よさにつながり、安らぎにもつながるものだと思います。例えると、おいしいお茶をいただいたときにホッとする感じ・・日々の小さな喜びでしょうか。そういう家具に仕上げられたらと思います。
体が触れる座と背はすべて無垢材から削りだして形を作っています。ちょうどよい形と大きさになるように設計してありますので、長く座っていても心地よいものになっていると思います。また、仕上げはオイルによるものですが座るたびに磨かれるようになり、使い込んだときにとても味わい深いツヤが出ます。
板座の椅子の良さは「座り心地」というよりもその「使い心地」にあるように思います。
すっきりした形を目指し部材は細めですが、しっかりした剛性感が出るように必要なところに補強材を入れた構造としています。一本の補強材が入るかどうかで剛性感は大きく変わってきます。
ステンレス部材はすべて手溶接で組み上げ、手磨きをかけました。
心地よさとは・・
しっくりくる座り心地を生み出すために厚めの材からゆるやかな曲線で座面と背を削り出します。また座面の裏側も丁寧に削ります。見えない箇所ですが、全体のバランスを考えてここもきっちり作業します。座わりながら椅子を引いたりするときに座面裏に手をかけますから、ここもちゃんと仕上げておきたいですね。
ステンレス部材も溶接箇所を丁寧に仕上げていますが、手間を惜しまない仕上げのすべては心地よさへとつながっていくものだと考えて作っています。
材料も作り方もちょっと贅沢な椅子かもしれませんが、よくよく考えてノリト・チェアーとなりました。椅子はあまたあります。考え方も作り方も色々です。ずっと使います。毎日体をあずけます。そういうことの中で何を感じていたいのかということかもしれません。
僕たちは、丁寧にまじめに作ったものを提案したいと思います。
素材の良さを感じられる椅子として
2種類の材で作りました。
座と背にはウォールナット材とナラ柾目材を選びました。どちらも家具材として歴史が有り、適材だと思います。
それぞれに個性がありますが、ウォールナット材はしっとりした柔らかさと濃い暖かみのある茶色が特徴です。ナラ柾目材はやや硬質で、カチッとした中に柾目特有の模様があり、使い込むと深い味わいを生み出します。
2020/9/28 材料事情により家具の受注を当面控えます。
詳しくはNewsで
Norito Chair
ウォールナット材+ステンレス
価格:166,000円 (税込み:182,600円)
サイズ:W42×D52×H73×SH40-41.5cm
仕上げ:オイル
Norito Chair
ナラ柾目材+ステンレス
価格:161,000円 (税込み:177,100円)
サイズ:W42×D52×H73×SH40-41.5cm
仕上げ:オイル